第四紀地質学-quaternary geology-

第四紀地質学

研究テーマ

南極大陸の氷床や棚氷、海氷の発達・衰退は、地球上のさまざまな要素に影響を与えてきました。 その影響は、例えばアルベド、海洋熱塩循環、陸上露岩の風化・浸食率や海洋の温度構造、生物生産量の変化といった現象となって現れてきたと考えられます。 このような変化は、地球上のエネルギ-分配、温室効果ガスを含む大気組成・物質循環に大きな影響を与えてきたはずです。 しかし、これらの相互関係や因果関係の詳細については十分に明らかにされていません。
そこで、我々はこの関係(南極氷床の変動と地球システムとの相互作用)を明らかにするため、陸上・海洋双方からの調査に加え,シミュレーションによる解析を行っています。 陸上では、内陸山地からの沿岸域(下図①~②)において野外での地形地質学的調査を、 海洋では、沿岸・遠洋域(下図③)での堆積物の採取・解析と音波による地層探査を行い、正確な南極氷床の規模や形態の変化の歴史を明らかにし、古気候・古海洋変動との関係を議論します。 調査の結果をシミュレーションに反映させ,過去の氷床変動の復元や将来の予測に貢献したいと考えています。

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ターゲットとする時代は「最終氷期以降 (過去約2万年間)」と「新生代後期 (特に過去300万年間)」。 両者は対象とする時間スケールが異なりますが、どちらも南極氷床が大きく変動した時代です。

これらの調査から
1. 南極氷床は過去にいつどの程度変動したのか、
2. 南極氷床の変動をもたらした内的原因は何か、
3. 南極氷床の変動をもたらした外的原因は何で、その変動が周囲の環境にどう影響したのか、
という3つの点について検討を行います。
最終的には、地球環境変動システムに対して南極氷床・南大洋がどのような役割を果たしてきたのかに対する新しいアイデアを提案し、将来の地球環境変動の予測に貢献することを目標としています。

最近の研究成果・経過

  1. 内陸
    第51次南極地域観測隊に参加し、南極セールロンダーネ山地において約3ヶ月にわたる地形・地質学調査を実施しました。 現地において氷床高度変動に対応する地形面の区分を行った後、表面露出年代測定と固体地球応答モデリングを組み合わせ、 過去300万年間の東南極氷床高度の変動史を明らかにしました。 この成果は、Quaternary Science Reviews誌(97号)に掲載されました。
    参考:国立極地研究所プレスリリース(http://www.nipr.ac.jp/info/notice/20140728.html)
  1. 遠洋
    海底堆積物の古地磁気強度とBe-10フラックス変動から、古地磁気Lock-in depth (約15 cm) を決定しました。
    この結果、地磁気変動に基づく海底堆積物とアイスコアの高精度年代対比手法を確立するとともに、Brunes-Matsuyama 地磁気逆転境界の年代が約 77 万年前に変更されることを示しました。
    また,海底堆積物の古地磁気記録獲得機構についても新たな事実を明らかにすることができました。この成果は、Earth Planetary Science Letters誌(296号および311号)に掲載されました。
  1. 数値モデリング
    Glacial Isostatic Adjustment モデル(GIA モデル: 氷床変動によるアイソスタシーの効果をシミュレートする数値モデル)を構築し、最終氷期以降(過去約2万年)の南極大陸沿岸域の海水準変動を再現しました。最終氷期以降の南極氷床変動史や地球内部粘性構造が、南極大陸沿岸域の海水準変動の地形地質学的観測値に与える影響を数値的に明らかにしました。この成果は、Geoscience Frontiers誌(4号)に掲載されました。

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